野村 亜希子
(のむら あきこ)

東京都墨田区
2009年10月開設

テューターになる前はどんなお仕事をしていましたか?

 大学を卒業した後,不動産会社に一般事務として就職しました。その後,アメリカに留学し,大学に編入しました。当初は1年ほどの語学留学で十分だと思っていたのですが,講義を受けるうちにもっと勉強したくなり,結局大学を卒業するまで在籍し4年も過ごしてしまいました。そして,日本に帰国する前に,留学中の経験を生かし海外で仕事をしたいと思い,オーストラリアの小学校で日本語教師の職に約2年就きました。帰国後は金融関係の会社に再就職し,結婚して二人目の子どもが1歳になるまでは正社員のワーキングママでした。
 帰国後の仕事は,留学や日本語教師の経験を直接生かせるものではなかったので,私が本当にやりたいことはこれなのか? という葛藤がありました。また,次男の体が弱かったこともきっかけとなり,退職しました。
 いつかは英語を教える仕事に就きたいと思っていたので,在職中から市販の英語の歌やマザーグースの教材を購入し,ひそかに準備していました。

テューターになったきっかけを教えてください。

 子どもに外国語を教える仕事に就きたいと思うようになったきっかけは,オーストラリアの小学校での日本語教師の経験です。留学や大学で学んだ経験が生かせると思い挑戦した日本語教師でしたが,相手が子どもだと勝手があまりに違いすぎ通用しませんでした。大人とは全く違う感覚,特に耳からことばを覚えていくさまに感動と興味を覚えました。また,子どもは正直なので,面白いレッスンにしないと,全くついてきてくれません。6歳から12歳の子どものそれぞれの発達に合わせて,どうしたら楽しく学べるかを考えるのがたいへんでもあり,楽しくもありました。
 ラボに出会ったのは帰国して数年経ち,長男が1歳になった頃でした。英語と日本語で読み聞かせをできる絵本を探していたら,偶然ラボにいきつきました。ホームページでテーマ活動(英語・日本語の物語の劇表現)のことを知った時,私がやりたかったのはこれだ! と,ビビビッときました。というのは,オーストラリアで一番楽しかったレッスンは,日本の物語を題材に,子どもたちが物語について話し合い,劇を作り上げて発表する,まさにラボが何十年も続けているテーマ活動だったのです。

普段はどのような活動をしていますか?

 私はテューターとして,フルタイムで働くことを目標にしていますので,週5日12クラスと2つの保育園で正課クラスをしています。どのクラスも元気よく歌で始めます。元気に歌うことで,子どもは日常から解放され,ラボのスイッチが入るような気がします。歌が終わると,テーマ活動の時間です。テーマ活動をするためには,家でラボ・ライブラリー(英語・日本語で録音されたラボの物語教材)をたくさん聞いてくることが大前提ですが,昨今は子どもたちもたくさんの習い事や塾通いで忙しいようで,家でラボ・ライブラリーを十分に聞けない子も増えてきています。そこで,最近は,お家でもまた聞きたい! と子どもたちが思えるようにすることに,まず力を注いでいます。
 クラスでみんなとお話を楽しむことと,家で一人で聞くことを何度も重ねていくうちに,子どもたちの中でだんだんお話が立体的になっていく感じがとても面白いです。レッスンの最後には,その日のレッスンで楽しかったことや物語の感想など,自由にノートに書くことにしています。それは,やがて自分の感じたことを自分の言葉で表現する力につながると思うからです。
 また,年に一度は発表会に向けて教室全体で一つのお話に取り組みます。発表するお話を選ぶところから,子どもたちは話し合いを重ね,普段は別のグループで活動している仲間と合同練習をして,本番に挑みます。
 大きな舞台での発表は緊張しますし,発表に至るまでの過程にはつらいこともあります。頑張っても上手くいかないこともあるでしょう。挑戦と失敗の繰り返しで子どもは成長していきますし,苦労した分達成感も味わえます。みんなで頑張って発表したお話とその中のことばは,感動とともに子どもの心に深く残ります。これは机上の学習では習得できないことだと思います。

テューターになってよかったこと,
たいへんなことはなんですか?

 テューターになってたいへんなことは,人によって違うと思いますが,私の場合は,毎日レッスンがありますしラボが大好きなので,レッスン以外の時間も頭の中がラボのことでいっぱいになってしまうことです。仕事とプライベートの境界がよくわからなくなっています。これは好きなことを仕事にしている人に共通する悩みかもしれません。家族にも,「ママはいつもラボのことばかり考えている」と文句を言われることもしばしば。部屋の中もラボのものであふれてしまい,服装も毎日ラボ用のTシャツとジーンズばかりで,おしゃれをしていた頃のことが遠い昔のこととなっています。教室運営,募集活動,保護者対応などで時にはたいへんなことももちろんありますが,楽な仕事はありませんので,そこは割り切ってやっています。
 よかったことは,たくさんの仲間に出会えたことです。ラボには細かなマニュアルがなく,自分で考えてやっていかなければならないことが多いのですが,決して孤独な仕事ではありません。事務局のスタッフ,テューター仲間に支えられていますし,教室の保護者の方々はクライアントであると同時にサポーターとして,私と一緒に教室の子どもたちの成長を見守ってくれる心強い存在です。子どもたちにとって,家族以外にも信頼できる大人が身近にいることは,とてもいいことだと実感しています。また,ラボは他の習い事に比べると,在籍期間が長くなりますので,子ども同士も幼なじみやきょうだいのような関係の仲間に囲まれて育ちます。年齢差の大きい異年齢の活動には,学校や他の習い事では得られないものがあります。

これからラボでしていきたいこと,夢はなんですか?

 目標はこれからも楽しいラボを続けることです。これまでは,どうしたら子どもたちが喜んでくれるだろう? どうしたらやる気になるだろう? と,私が楽しいことを与えるのに一生懸命でした。これからはそれだけではなく,楽しくなるかならないかは自分次第だということに子どもたちが気づいていけるようにしたいと思っています。「受け身ではなく,自分から積極的にかかわった方が楽しいし,学びもあるんだよ」と口で言うだけでは,なかなか子どもには伝わらないと思います。もっともっと子どもの心がワクワクして,自然に心も身体も動き出すような活動ができるようになりたいです。
 それから,子どもたちが挑戦できる機会をたくさん作りたいです。失敗してもいいからどんどん挑戦してほしい。失敗しても,自分で起き上がれる子に育ってほしい,と思っています。間違いや失敗を恐れていたら前には進めません。本当に欲しいものは自分から獲得しにいく積極性は,これからの国際社会では必要なことだと思います。このことに気づく機会として,多くの子どもたちに,中学生で1カ月の北米ホームステイを体験するラボの国際交流に参加してもらいたいです。
 あとは,私がいつまでも元気でいることですね。

どんな方にラボ・テューターをお勧めしたいですか?

 「英語(ことば)」と「絵本(物語)」と「人と関わること(交流)」の3つが好きな方。もちろん,最初から3拍子揃っていなくても大丈夫です。
 ラボには,「私には無理かも」と思っていたことも,「やってみよう!」と思わせる何かがあります。大人になってからでも人は成長できるし,新しい自分を発見できるものです。子どもと一緒に自分も成長できたらいいな,と思っている方は,一度ラボの門をたたいてみてください。