四元 佳奈子
(よつもと かなこ)

埼玉県さいたま市浦和区
2006年9月開設

テューターになる前はどんなお仕事をしていましたか?

 ラボ・パーティとは全く畑違いの化学メーカーに勤めていました。医薬品開発の研究から始まり,健康食品の開発も担当しました。畑違いとはいえ,研究開発には英語論文を読むのが基本でしたし,健康食品開発の際は,原料を供給してほしい海外の会社とメールのやり取りをしたりと,英語には常に触れていました。

テューターになったきっかけを教えてください。

 児童英語には元々興味がありました。
 息子が生まれてからは,毎晩絵本を読んでいました。その中には英語絵本もあり,まだ英語がわからない息子のために,身振り手振りを加えながら読んでいました。今思うと,ラボと似たようなことを取り入れていたなと思います。
 息子が幼稚園に入園した時に,課外教室としてあったラボ・パーティを知りました。私は当時,フルタイムで仕事をしていたので,ラボ・パーティの魅力に気づいたというよりは,体験後に息子が「やりたい」と言ったので入会させた,というのが正直なところです。家庭でラボに関わる余裕はありませんでした。
 下に娘もいたので,保育園に預けながら仕事をするのが物理的に難しくなり,仕事を退職。自宅で過ごす時間ができ,初めてライブラリーに意識がいきました。そこでラボ・ライブラリーを使って娘と何か楽しめないかなと考えていたところ,息子がお世話になっていたテューターからこの仕事を勧められました。私は人に「教える」ということがたいへん苦手なのではじめは断っていたのですが,「テューター・スクールだけでも参加してみては」と何度も勧められ,スクールに通い始めました。そしてそこで初めて,ラボの魅力を実感しました。何より,私が英語の歌を覚えようと練習していると,それを聞いていた息子のほうが先に歌えるようになったことに驚きました。そんなことから,やや遠回りはしましたが「親子で楽しめてわが子にもよさそうなラボは面白そうだ」と実感したのが,テューターになろうと思ったきっかけです。
 また,ラボは「教える」ではなく,子どもたちの能力を引き出す・伸ばす・見守る,ということや,“This is a pen.”を繰り返すようなつまらない英語指導からはじめるのではなく,物語を主体に活動しながら英語を体から習得していくというのも魅力でした。「先生」と呼ばれる仕事はしたくないと思っていた私には,「テューター」と呼ばれる立場で子どもに関わるという仕事はちょっと変わっていて面白いと感じました。

普段はどのような活動をしていますか?

 自宅クラスと幼稚園会場クラスの2ヶ所でやっています。同じパーティ(教室)のメンバーでも,それぞれの個性でどのクラスもカラーが違っています。同じようなプログラム内容でも,それぞれのグループの子どもたちに合わせた方法で英語の歌やおはなしを取り上げたりもしています。各グループ相互の交流の場として,時々パーティ全体での行事を開催したりしながら,子ども同士のつながりを持てるようにしています。また,子どもたちが英語に少しでも確実に自信を持てるように,英語の歌やおはなしを覚えて,一人ひとり発表したりしています。さらに,劇活動の発表会に向けては,物語の世界をみんなで創り上げていけるように,たくさん練習の場を設けています。その中で子どもたちは,単に英語を覚えるだけでなく,英語で話したい,英語で伝えたいという気持ちも一緒に育っていきます。

テューターになってよかったこと,
たいへんなことはなんですか?

 よかったことは,子どもたちのちょっとした成長を垣間見られることです。人見知りだった子が,いつの間にかみんなの前で堂々と話すようになっていた,行事に出るたびに不安や緊張でいつも泣いていた子が,不安なく北米に1ヶ月ホームステイしてきた,など,長く一人ひとりの成長を見ることができるのは,テューターならではの特権です。
 たいへんなことはやはり,一人ひとりの人間と向き合うので,私の価値観だけ押し付けるわけにはいかず,子どもたちが今どんな心境なのか,何を求めているのか,見えない部分を探ることです。よかれと思ってしたことが実は子どもを傷つけていないかなど,常に気を遣っています。発表会までの準備期間は,楽しさだけでなく,むしろ「生みの苦しみ」を伴います。この期間は,本当にこのおはなしを選んでよかったのだろうか,もっとそれぞれにいい言葉がけができなかっただろうか,と悩む期間でもあります。
 海外ではコミュニケーション力をつけるために劇活動の授業がありますが,確かにこの苦しみを越えてみんなで創り上げた後の結束は強くなることも実感しています。
 よいこととたいへんなことは表裏一体です。たいへんだけれど,だからこそ思いがけない楽しみもいっぱいです。

これからラボでしていきたいこと,夢はなんですか?

 我が家は,海外青少年のホームステイ受入れを毎年のようにしています。受入れした子たちが数年後に日本に来る時に連絡をくれたり,また大学に入学した,結婚した,などの報告を聞けるのはとても嬉しいです。我が家だけでなく,今後も他のラボ家庭にも,ホームステイに送り出すだけでなく,海外からの来日者を受入れてみるよう勧めていきたいです。こうした小さな活動の積み重ねが,世界平和につながると信じています。ラボで育った子たちが,国境を越えて世界中の人たちといい関係を作っていける土台をつくっていきたいと思っています。

どんな方にラボ・テューターをお勧めしたいですか?

 最初は子どもが苦手,人前で話すのが苦手,人に教えるのが苦手……など,「自分はテューターには向いていない」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。それでも,他の国に興味がある,洋書絵本が好き,英語の歌が好き,など,きっかけは何でも「ピンときた」方は,まずは「テューター・スクール」だけでも,参加してみてはいかがでしょう。スクールの中でたくさんの発見があります。
 子どもたちは大人が思うようには動かないので,その時々の「ピンとくる」感覚はとても大事だと思います。その感覚で子どもに接していると,自分も楽しくなる,という感覚を私は味わっています。
 私はラボを始める前の仕事は畑違いでしたが,実は憧れだった世界にいつの間にかいました。海外の人たちと友達になりたい,ホームステイをしてみたい,と当時叶わなかったことが今現実になっています。
 「一歩踏み出す」気持ちをお持ちの方なら,どんどん世界が広がっていくので,恐れず挑戦してみてください。