
仲澤 ますみ
(なかざわ ますみ)
岐阜県 岐阜市
2010年5月開設
ラボ・テューターになる前はどんなお仕事をしていましたか?
以前は通信教育・出版事業を行う企業の相談室で、子どもたちから寄せられる家庭や学校、友だち関係などの多岐にわたる悩みに寄り添う「レターカウンセラー」の育成や運営に携わっていました。
また、教育雑誌の編集にも関わり、谷川俊太郎さんや工藤直子さんに執筆いただく機会もあるなど、教育メディアでとても充実した日々を送っていました。
その後、体調を崩したことをきっかけに退職し、結婚して岐阜へ移り住みました。
知り合いもいない土地での新生活は期待よりも不安の方が大きかったですね。
さらに夫の仕事の関係でアメリカの研究所に滞在していた際、妊娠中に車の事故にあって切迫流産となり、安静が必要となりました。
思いがけない出来事が重なった時、現地の奥様方が本当に親身になって助けてくださったんです。
見返りを求めず手を差し伸べてくれる人たちの温かさに触れ、
「人とのつながりは人生を支えてくれるものなんだ」
と実感しました。
この経験は、今のテューター活動にもつながっているように思います。
ラボ・テューターになったきっかけを教えてください。
岐阜で長女の幼稚園を探していた時、同じように転居してきたお母さんと親しくなり、「子ども劇場」と「ラボ・パーティ」を紹介してもらったのが最初の出会いでした。
当時の私は、知り合いも少ない土地で子育てをしており、どこか心細さを感じていました。
そんな中で出会ったラボ・パーティには、子どもたちだけでなく保護者同士も支え合える温かなつながりがありました。
親子でラボ・パーティ活動に夢中になり、気がつけば子どもたちは高校生、大学生へと成長していました。
その頃、長年お世話になったラボ・テューターから、「親の介護のため東京に通うことになったので、パーティ(教室)を引き継いでほしい」と声をかけていただきました。
私は驚きましたし、「私にはとてもできません」と何度もお断りしました。
でもその方は、「私はラボ・テューターをやっていて本当に幸せだった。こんなに幸せな仕事はないのよ」と繰り返し話してくださいました。
そしてもう一つ心を動かされたのは、「このパーティをなくしたくない」という思いでした。
ラボ・テューターが長年育んできた子どもたちの居場所や保護者同士のつながり、その温かな文化を次の世代へつないでいきたい。
そんな気持ちが少しずつ大きくなり、16年前にバトンを受け取る決心をしました。
普段はどのような活動をされていますか?

現在は土曜日に年齢別の活動を行っています。
2歳頃から参加する「親子ラボ」のクラスでは、赤ちゃん連れのお母さんが上の子の活動に参加することもあり、年齢や立場を超えた自然な交流が生まれています。
子どもたちの成長を見守るだけでなく、保護者同士が子育てについて語り合い、支え合う関係が続いていることも、ラボ・パーティの大きな特徴です。
ラボ・パーティの活動の一番の特徴は、英語・日本語で語られる物語を登場人物の気持ちや場面を想像しながら、仲間と一緒に表現する「テーマ活動」です。
物語の中には、さまざまな場面や感情、そのことばが生まれた文化が詰まっています。
単語や会話表現だけを覚えるのではなく、「誰が、どのような気持ちで話しているのか」を考えながら物語を楽しむことで、英語をことばの意味や背景とともに身につけていきます。
子どもたちは物語の世界に入り込み、体を動かしたり、登場人物になってことばを発したりしながら、のびのびと表現を楽しんでいます。
また、私のパーティでは「フェローシップ」という大人のためのクラスも行っていて、昔のPTA仲間やラボ・パーティのOG、子育てを終えた世代の方々などが参加しています。
フェローシップでも、英語の歌や物語を楽しみ、仲間と語り合ったり、朗読やテーマ活動 劇で表現したりしながら英語に親しみますが、子どもたちの活動とはまた違った面白さがあります。
子どもたちが物語のことばを素直に受け取り、体いっぱいに表現するのに対し、大人たちは、これまでの人生経験を重ねながら物語に向き合います。
若い頃に読んだ物語を人生経験を重ねてから読み返すと、全く違う発見がありますし、それぞれの人生が物語と重なり合うことで作品の味わいも深まります。
このように、大人ならではの視点で物語を深く楽しめるのは、フェローシップならではの豊かな時間です。
ラボ・テューターになってよかったこと、たいへんなことはなんですか?
【よかったこと】
一番の喜びは、子どもたちの成長を長い時間をかけて見守れることです。
幼い頃は恥ずかしがり屋だった子が年下の子のお世話をするようになったり、自分の夢を見つけて希望する進路へ進んだりする姿を見るたびに感動します。
ある子は、ラボ・パーティのOBでアメリカ在住の叔父さんに憧れて、彼と同じ大学の医学部に現役合格しました。
その時は、みんなで涙を流して喜びました。
また、私自身の娘も中学生の時にカナダでホームステイを経験し、その体験が現在の野生動物研究の道につながっています。
ラボ・パーティを通して子どもたちの世界が広がり、自分らしい未来を切り開いていく姿を見ることは、何にも代えがたい喜びです。
子どもたちの成長を支える場であると同時に、自分自身も学び続けられる場でもあることは、私が長くラボ・パーティに関わり続けている理由の一つです。
さらに、ラボ・ライブラリー(英語・日本語で録音された物語教材)が一流の俳優による朗読や音楽で制作されており、この教材を通して一流の物語や音楽に触れ続けられることも大きな魅力です。
【たいへんなこと】
私は会場を借りて活動しているので、毎回たくさんのラボ・ライブラリーやラボグッズを運ばなければなりません。
車がほとんど倉庫のようになっています(笑)。
体力も必要なので、ヨガを続けながら健康維持に努めています。
これからラボ・パーティでしていきたいこと、夢はなんですか?
私が恩師から受け取ったバトンを、今度は次の世代へつないでいくことが一番の願いです。
ラボ・パーティには、一人のラボ・テューターだけでなく、子どもたちや保護者、卒業生など、多くの人たちの思いが積み重なっています。
だからこそ、私が受け継いだこの温かなコミュニティを大切に育てながら、次の世代へ手渡していきたいと思っています。
最近では卒業生が親になり、自分の子どもを連れてパーティに戻ってきてくれるようになりました。
親子二世代、そして三世代へとつながる関係が生まれていることは、本当に嬉しいことです。
また、我が家で月に一度開催している「子ども文庫(ネバーランド)」やフェローシップのクラスを通して、子どもも大人も集える地域の居場所づくりを続けていきたいと思っています。
子どもたちが安心して育ち、大人たちも学び合い支え合える、そんな場をこれからも育んでいくことが私の夢です。
どんな方にラボ・テューターをお勧めしたいですか?
子育てがひと段落し、「これから自分は何をしていこう」と考え始めている方にお勧めしたいです。
ラボ・テューターは、子どもたちの成長に関わりながら、自分自身も学び続けることができる仕事です。
物語やことばが好きな方、人とのつながりを大切にしたい方、地域の中で誰かの役に立ちたいと思っている方には、きっと大きなやりがいがあると思います。
私自身、恩師が語ってくれた「こんなに幸せな仕事はない」ということばを、今は実感しています。
人生の後半だからこそ始められる新しい挑戦として、ラボ・テューターという道をぜひ知っていただけたら嬉しいです。